文豪、夏目漱石が旧制一校で講師をやっていた頃のエピソード。
生徒の中に、いつも左腕を着物の中に入れたぞんざいな感じの男がいた。
見かねた漱石は、ある日ついに
「○○くん、授業中は左腕を出しなさい」
と注意した。
しかし、隣に座っていた男が言った。
「先生、この男は事故で左腕がないのです」
漱石先生、しまった、と思ったがもう遅い。
緊張で張り詰める空気・・・
しかし、そこで漱石はすかさずこう切り返した。
「私もない知恵を出して講義をしているのだから、君もない腕を出したまえ」
満場爆笑、そして喝采。
ない知恵どころか、限りないインテリジェンスとウィットのセンス。
稀代の識者、夏目漱石をよく物語る逸話である。
人間、頭がいいだけではいけない。
ユーモアとウィットがあってこその、魅力的な人間。
勿論、私などではとてもではないがこんな切り替えしは出来ないけれど。
この有名なエピソードは、漱石を神格化したがる人への当て付けで、漱石だって失言をするのだ、漱石なんて大したことはないのだ、というネガティブな意味合いで語る向きもあるが、人間漱石の魅力を現す以外の何物でもないと思う。
ちなみに、後年、その左腕のない男はひとかどの人物になったと伝えられる。
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